🔹相続・遺言 コラム一覧

「相続は地獄の作業でした」――テレビでもお馴染みのあった経済アナリスト、森永卓郎さん。父親を亡くしたあと、10ヶ月近く相続手続きを続けた経験をこう表現しました。どれだけ資産があるか、どこにあるか、全く把握できていなかったのです。今回はその生の声から、私たちが『今、準備すべきこと』を整理します。

どこに何があるか分からなかった

森永さんはお父様の遺産を相続する際、預金や証券口座がどこにどれだけあるか全く把握できていませんでした。銀行からは『被相続人が生まれてから亡くなるまでの全戸籍』を求められ、その収集だけで数週間を要したといいます。さらに、ようやく見つけた口座の残高は700円――。こうした経験から、親の資産の“所在リスト”を生前に共有しておく重要性が浮き彫りになりました。

不動産を残すリスク

森永さんは実家マンションをそのまま相続しましたが、固定資産税や管理費など、維持費の負担が重くのしかかりました。さらに、相続税は現金で10ヶ月以内に納付する必要があるため、不動産だけが残ると支払いが困難になる場合もあります。『もっと早く売っておけばよかった』という言葉が印象的です。

相続ルールの“複雑さ”に備える

相続では、金融機関・税務署・法務局など複数の窓口で手続きを行う必要があります。株式や投資信託を相続する場合は取得価格の把握が難しく、譲渡時に二重課税のような問題が生じることもあります。また、介護費用の立替えや生活援助が相続分に影響することもあり、専門家への早期相談が安心です。

山下秀二行政書士事務所からのご提案

相続や遺言に関するご相談は、早めの準備が何よりの安心につながります。徳島・鳴門地域でご相談を受けてきた当事務所では、『財産・口座リストの作成』『遺言書の作成支援』『実家じまいの手続き』など、ご家庭の事情に合わせたサポートを行っています。まずはお気軽にご相談ください。

まとめ

どれだけ準備しても、相続には思わぬ手間や“偶然”がつきものです。しかし、親が元気なうちに資産や口座の所在を確認しておくことで、いざという時に慌てることなく、心穏やかに手続きを進めることができます。家族で少しずつ話し合いを始めることが、最も大切な第一歩です。

長男、廃除?海外赴任で疎遠…遺言書で“相続権剥奪”を狙った父の本音

10年以上の海外赴任、帰省は年に数回。父が遺言書で長男を外そうとしたその背景には、世話をしたのは“日本に残った妻と子ども”だったという現実がありました。しかし、法は“ただ疎遠”という理由だけでは相続人の廃除を認めていません――。

1.なぜ「長男を廃除」しようとしたのか

家族の中で特定の子どもだけを相続から外したい――そんな相談は珍しくありません。特に、長年疎遠になっていたり、介護・同居などで他の兄弟が多くの負担を担っていた場合、『不公平ではないか』と感じる親心が背景にあることが多いのです。

2.民法上の「廃除」が認められるための要件

民法第892条では、相続人の廃除が認められるのは次のような場合に限られています。  ① 被相続人に対する虐待があった場合  ② 被相続人に対して重大な侮辱をした場合  ③ その他著しい非行があった場合 単に『疎遠』『連絡がない』というだけでは、これらに該当しないとされるのが実務です。

3.遺言書に書くだけでは足りない、手続の壁

遺言で「長男を廃除する」と書いても、それだけでは効力を持ちません。家庭裁判所への申立てと審判が必要で、具体的な理由や証拠がなければ認められません。遺言書に廃除の意思を明記しても、遺言執行者が家庭裁判所に申し立てて初めて効力を持つのです。

4.家族関係の整理が“争族”を防ぐ

法律的な廃除が難しい場合でも、遺言書の中で『付言事項』として思いを伝えることは可能です。誰にどんな理由で財産を託したいのか、日常の関係性や感謝の言葉を残すだけでも、遺された家族の受け止め方が大きく変わります。

5.専門家に相談しながら進める意義

遺言・相続の場面では、感情と法律の両立が求められます。相続人の廃除や遺留分への配慮、相続分の調整など、慎重な文面設計が必要です。行政書士や弁護士など専門家に相談しながら、法的に有効かつ心情に寄り添った遺言書を作成することが大切です。